環境マネジメント推進室について

室長メッセージ

ギリシャ語のオイコス(家)を語源として「エコロジー」という言葉を生みだした女性科学者、エレン・スワロー・リチャーズは、米国家政学会の創設者のひとりとしても知られています。人間が健康に暮らすためには、一方では自らの暮らす家を、つつがなくまわし整える必要があり、さらにその家を取り巻く環境を、清らかで豊かなものにしていく必要がある。マサチューセッツ工科大学の最初期の女性卒業生であったリチャーズは、水質検査方法の確立などにおいて衛生化学研究に貢献すると同時に、最小設備でありながら不特定多数の人が快適に利用し一定水準以上の調理が可能な台所をそなえた、低所得者層向けの共同食堂「ニューイングランド・キッチン」「ランフォード・キッチン」を提唱しました。
私はこのリチャーズのエピソードに、環境とダイバーシティの不可分の関係、そしてこれらの取り組みにおけるマネジメントというものの重要性を、読み取ることができると思っています。環境汚染や破壊は、単にその状況をモニタリングするだけで止めることはできず、その検査結果から導き出される採るべき改善方策を、どのように私たち自身のオイコス、すなわち暮らし活動する場の自主管理に組み込んでいけるかが、鍵となるのだ、と。
そしてオイコスは、狭い意味での家庭に限りません。ギリシャにおけるオイコスもまた、ポリス(都市国家)に対する責任を担う市民の、暮らす場であると同時に、女性たちが織物を織る生産の場であり、家庭教師が市民の子弟だけでなくときにその家の奴隷をも生徒として、学問を教えイデアを議論する場でした。社会に対する市民的責任の場であり、生産と教育とイデアの追求の場であるという意味で、大学はまさに「現代のオイコス」のひとつと言えるだろうと思います。
環境マネジメントシステムは、大学というオイコスの自主管理に、環境に関する課題克服をいかに組み込んでいくのか、ということではないかと、私は考えています。私自身も家政学の学士号・修士号をもつ女性研究者であり、その点でも、リチャーズの提唱したエコロジーに関われることには、浅からぬご縁を感じています。大学という巨大なオイコスを、エコロジーの視点でどう切り盛りできるか、身にあまる課題ではありますが、精一杯取り組む所存です。皆様のご助力ご鞭撻を、どうぞよろしくお願い申し上げます。

環境マネジメント推進室 室長

環境マネジメント推進室 室長
海妻 径子

岩手大学環境方針

基本理念

 岩手大学は、地球環境の保全・再生が21世紀の最重要課題の1つであると認識し、環境意識の高い人材の育成をはじめ、環境保全・再生に向けた教育・研究を積極的に推進し、SDGs(持続可能な開発目標)を踏まえ、持続可能な社会の実現に貢献します。またその一環として、岩手大学内の活動のすべてにおいて、大学・附属学校構成員及び常駐する大学関係者が一致協力して環境に配慮し、大学の社会的責任として環境負荷の軽減と環境汚染の予防やキャンパス環境の改善に努めます。

基本方針

岩手大学は、基本理念を実現するために、岩手大学ビジョン2030に基づいた中期計画を踏まえ以下の活動に積極的に取り組みます。

  1. 環境保全・再生に係わる教育・研究を意欲的に展開し、社会が求める環境意識の高い人材を養成します。
  2. 環境に係わる教育・研究の成果を踏まえ、地域社会を含むあらゆる人々に対する教育、啓発、普及活動などに取り組みます。
  3. 地域のNPOや行政等と連携して、地域の環境保全・再生の取組、生物多様性の保全に積極的に関与します。
  4. 環境に関連する法令及び岩手大学が同意する環境に関する要求事項を順守するとともに、環境マネジメントシステムによってキャンパス環境の継続的改善を図ります。
  5. 本方針を踏まえた目的に基づき、毎年目標を定め、省エネルギー・省資源、廃棄物削減、再資源化、グリーン購入などに積極的に取り組みます。
  6. 環境方針をすべての構成員に周知し、実行するとともに、その結果を広く一般にも文書及びインターネットで公開します。

2006年1月26日 制定
2022年3月25日 最終改正

室長 海妻径子